腕輪物語4

中民はきわめて表に出たがらない。さりながらはなはだ古い種族で、以前は人口も今とは比べものにならないくらいくらい、実に多かった。というのも、平和という静けさとよく耕された大地を愛する民族だからである。整地よく、耕作よき田園こそ、彼らが好む住み処であった。彼らは道具の扱いがうまいくせに、今も昔も、炉と鞴、水車、または手織機の類より複雑な機械はわからず、または好まなかった。古代にあってすら、中民は一般に彼らが言植われ我人間族の通称「大きい人たち」を疎んじていたのだが、今日では我々の姿を見かけると恐れあわてて身を避けるのである。彼らを見かけるのは困難といってよい。
彼らは耳ざとく、目が利き、たいてい太る体質で、いざとならなければ決して慌てない性格で、動作は素早く機敏である。彼らは、自分たちが会いたくないと思っている「大きい人」ががさがさやってくると、音もなく速やかに姿を隠す術を最初から持っていたのだが、だんだんそれを発展させ、ついには人間には魔法と思える域まで仕上げた。しかし実際には中民族は未だかつていかなる魔法も習得したことはなかった。彼らの隠身はほかでもない、遺伝と修練と大地との親交の結果である。もっと大きくて不器用な種族には真似のできないものとなった特殊技術である。