ホタルノヒカリなのに猟奇的な彼女8

今日また猟奇的な彼女、6回目を見てしまいました。でも見終わったらまた見たくなりました。完全に中毒です。また見ている最中でもパブロフの犬のようにいい場面が近づいてくるとうるっと来てしまいます。
今回注目したのはキーになる台詞です、すごいと思った台詞が2つ在りました。
一つ目は冒頭、彼女がゲロはいて気を失う直前に言ったキョヌに対しての台詞、韓国語でなんと言っているのか解りませんが日本語字幕ではダーリンと訳されていました。ダーリンとは女の人が愛する人、彼氏、旦那、夫に対して最大限の愛情を示す英語で、日本語ではあなたと言うことしか当てられないとおもいます。それを英語でダーリンと当てた人はほんとにすごいと思いました。そうすることによって彼女にとってキョヌは最愛の人、彼氏、かけがえのない人、保護者、責任を持たなければならない人すべての意味を乗っける事ができるからです。それによって今まで単なる傍観者だったキョヌが一気にこの場面の主役にならざるをえなくなって、この場の後始末と彼女の介抱をすべき人間はキョヌと言うことを電車の中の人間に知らしめたすばらしい台詞だと思いました。でもこれだけではありませんでした。最後まで見ると解るのですが実はキョヌは彼女が死に別れた彼氏とそっくりで、この日は彼が死んでちょうど一年、なんとか彼を忘れさせてほしいと彼との思い出の場所に行ってお願いしてきたところで、そんな日に彼とそっくりなキョヌと出会って、彼が引き合わせてくれたと思っていたからこの言葉が出てきたのだと後で解りました。でも彼女は次の日そんなことを言ったかもしれないとごまかして、この映画を見ている人の印象をごまかして単なる災難な言葉だったと意識の表面から意図的に沈めていき、かすかに記憶に残るようにして最後の手紙の下りにつなげる伏線にするなんてほんと憎たらしいです。
そしてもう一つは最後の奇跡の再会シーン、彼女が一年半イギリスに行っていたから今度イギリスへ行くキョヌ(映画冒頭、おばさんの家に行く前に写真を撮っていたのはイギリスへ行くためのパスポートの写真)は色々彼女に聞いたらいいとおばさんが言ったとき、キョヌが彼女の顔を見つめて「もう行かなくていい」と言った台詞です。イギリスから帰ってきた彼女とイギリスへ行くキョヌ、これってまたすれ違いと一瞬思った瞬間の台詞です、また監督の罠にはまってしまいました。おじさんといい、おばさんといい、一瞬錯覚させる監督の罠でした。
そしてこの「もう行かなくていい」という台詞は、一方では彼女にキョヌはこの三年間ずっと彼女を待ち続けてきた、待っていたと言うより探していたということを一言で表してくれました。
彼女としてはキョヌが携帯電話の番号も変えてしまっていたし、1年遅れたのでひょっとして心変わりしてしまったのではと言う不安があったかと思います。
それなのにキョヌは親がキョヌとの交際に反対していたので彼女がどこに行ったのか知るのは大変なはずなのにイギリスに行ったということを探り当て会いに来ようとしてくれていた。そのためのイギリス行きだったと言うことを彼女に知らせる一言だったと思います。
それは何よりもキョヌが3年間変わらず彼女を思っていると言うことを彼女に知らしめる一言だったと思います。
画面では解らないのですがきっとこの言葉の後しっかりと彼女の手を握ったのだろうと思います。
「もう行かなくていい」この言葉の後にはもう二度と離さない、離れないと言う気持がくっついていると思います。